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植毛はおやつに入りません

 

不朽の名作あるある「バナナはおやつに入るんですか?」以来の崇高な問いが、ついに登場した。

「植毛は経費で落ちないんですか?」

池上彰改め偽髪彰ならば、「いい質問ですね~」と目をパチクリさせて喜ぶであろう至高の質問である。

この問題を提起したのは、このたび申告漏れに関する謝罪会見を行った板東英二。さすがは元投手、伸びのある豪速球を投げる。むしろ自らの胸元をえぐっている。

バナナと偽髪彰につなげたいがために、冒頭の台詞を質問形式に偽装したが、正確にはここまでシンプルな物言いではない。会見の言葉なので散らかっており、まとまった引用は難しいが、基本的には「カツラが経費で落ちると聞いたので、植毛もいいだろうと思った」という理屈である。つまり本質に間違いはなく、先の台詞は偽装というより誤表示のレベルであると言ってみたい。いくらか遠足風池上風に味つけさせてもらったが、芝エビは芝エビであり植毛は植毛である。こうやって偽装はエスカレートしてゆく。

いわば先に挙げた「植毛は経費で落ちないんですか?」という台詞は、板東の心の声、あるいは彼が国税局の役人に投げかけたであろう質問、そしてこのニュースを見た人々が受け取った疑問、ということになる。しかしこれ、食材からテレビのヤラセ疑惑まで、昨今の偽装ブームの本質をつく疑問である。やはりここでもまた、どこまでが許されて、どこからが許されないかという問題になる。

仕事用に使うものは経費、プライベートなものはそうでないとすると、カツラは家で外せるから経費、植毛は外せないから経費として認められないという理屈になるのだろうが、考えてみればカツラにも色々あるし、どのタイミングで外すのかも人それぞれだろう。

コント用のカツラなら私用でかぶることはまずないので完全に経費だと思うが、いわゆる薄毛用のカツラは撮影が終わって「お疲れさま~」と言うタイミングでジャケットを脱ぐように外すものでもないだろうし、帰り道でもまだ外さないだろう。では家に帰って玄関のドアを開けて「ただいまー」のタイミングで鮮やかに剥ぎ取るのかというと、それもあまりないのではないか。どういうカツラなら、どのタイミングで外すカツラなら許されるのか。「節税カツラ」ブームは来るのか。

そう考えていくと、あらゆるものがボーダーライン上に浮上してくる。スギちゃんのコーラは? ケント・デリカットのメガネは? エンペラー吉田の入れ歯は?

と、問題を拡大解釈しきったところで、改めて板東英二に差し戻すならば、最大の問題点はこの記者会見が謝罪会見というよりは釈明会見であり、同時に売り込み会見であったことだろう。はじめから一石三鳥を狙ったのか、質疑応答の流れで結果的にそうなっただけなのかはわからないが、謝罪と売り込みの抱き合わせはさすがに説得力を持たない。

「ピッチャー振りかぶって第一球、投げました!」

やはり投手ならば植えるのではなく、豪快にかぶるべきだったのではないか。「野球のシーズン中に自分の記事で新聞を賑わせたくなかった」というほどに、野球への想いがいまだあるのならば。ところでゆで卵は経費で落ちたんだろうか。

 

 

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