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『ラブレターズのオールナイトニッポン0』終了に寄せて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラブレターズのオールナイトニッポン0』が、一年間の放送をもって幕を閉じた。それについて思うところはTwitterにもいくつか書いたが、改めてここに書き記しておきたい。

そもそもの始まりは、2012年夏の『オールナイトニッポン45周年 お笑いオールスターウィーク』だった。とはいえ、番組スタッフの皆さんやラブレターズのお二人はそれ以前から準備を進めてここへ辿り着いているわけで、これは単に、僕にとっての始まり、というに過ぎないのだが。この時点でも、もちろんラブレターズのことは認知していたが、それはやっぱり『キングオブコント2011』決勝で観たときの印象がメインで、トークの実力は完全に未知数だった。

ちょうどその頃、僕は『日刊サイゾー』でラジオコラムを連載していて、毎回ひとつの番組を取り上げて書いていた。始まったばかりのコラムだったが、連載四回目の題材を決めるタイミングで、この『お笑いオールスターウィーク』という企画があるという情報が飛び込んできた。もともとお笑いのことを書きたくて始めたコラムだったので、この一週間についてぜひ書きたいと編集部に提案し、了承を得た。

そもそもが、この『お笑いオールスターウィーク』で放送される一週間十二番組を、たった一回分のコラムで書く題材に設定するということ自体が、僕の中では自分から自分への結構な無茶振りで、おそらくは最も衝撃に残った番組一つをフィーチャーして書くことになるだろうと想定していた。だがその一つの番組として想定していたのは、もちろん『ラブレターズのオールナイトニッポン0』ではなかった。

それはこの一週間の中に、千原ジュニア、バカリズム、サンドウィッチマンといった既に知名度のある実力者たちの名が含まれていたから。個人的には、知名度ありきの安全な楽屋裏話よりも、守るべきもののまだない人にしかできない勇敢な本音トークが好きなのだが、僕の書くものはラジオコラムではあっても、『日刊サイゾー』はあくまでもニュースサイトであってラジオサイトではない。だから知名度というのは、書く対象を選ぶ際かなり重要になってくる。一般的な記事の中にあると、人はどうしても登場人物の知名度で記事を選びがちであるから。と言いつつ、結構マイナーなネタも書かせてもらったんだけれども。

実際のところ、僕も千原ジュニアやバカリズムを中心に書くことになるだろうと思っていたし、だからこそ編集部サイドもOKを出したのだと思う。だけどその一週間十二番組をすべて聴いた結果、どうしてもメインに取り上げなければならないと感じた番組がひとつあった。それが『ラブレターズのオールナイトニッポン0』だった。

念のため言っておくが、僕は千原ジュニアもバカリズムもサンドウィッチマンも大好きだし、他にもこの『お笑いオールスターウィーク』の中に面白い番組はいくつもあった。実際、バカリズムに関しては、『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』が始まって以降、コラムで二度取り上げている。ただ、このときはやはり一週間を通じて企画全体にお祭り感があり、「一度だけの特別企画」っぽい雰囲気も漂っていたためか、「面白い」というよりは「楽しい」雰囲気の番組が多く、『オールナイトニッポン』という二時間の枠を全力で使い切ってやろうという緊張感の漲っている番組は少なかった。

その点において、『ラブレターズのオールナイトニッポン0』はズバ抜けていた。現状のラジオへの果たし状が見えた。その果たし状の裏面には、ラジオへの愛が見えた。果たし状がラブレターで、ラブレターが果たし状だった。無理にコンビ名に繋げようとすると、こうやって鼻白むことになるので以後気をつけたい。だけど本当に、ラジオに対する気概と愛情の両方を同時に感じさせる放送だった。それだけは間違いない。詳しくはラジオコラムに書いた。

だから僕はあのコラムの中で、あえてニッチなところを狙ったわけでも、奇をてらったわけでもない。むしろ『ラブレターズのオールナイトニッポン0』という番組の力によって、僕は「書かされた」というか、「書かなければこのコラムをやっている意味がない」とさえ思わされた。僕の中であのコラムのコンセプトは、ずっと「ラジオの本質的魅力とは何か?」と問い続けることだったから。

「じゃあそのラジオの本質的魅力って何だよ、ひとことで言ってみろよ」と問われたら、もちろんそんなものはわからない。わかったらつまらないし、考え続けてもわからないことにしか、考え続ける意味なんてない。わかったふりをしている人たちは、みんなわかったふうな顔をしているだけの嘘つきだ。でもその本質的な問いから逃げてなくて、真っ向から立ち向かっているのが『ラブレターズのANN0』という番組だった。安易な答えを提示することよりも、大切な問いから逃げないことのほうが、遥かに重要だ。この番組のどこがそんなに魅力的だったかは、これも詳しくはラジオコラムに書いたので、興味のある方は読んでみてほしい。そしてその魅力は、このたびの番組終了まで見事に貫かれた。

これからのラブレターズに期待する。僕は以前から、ラジオで面白い芸人は本物だと思っている。今は期待しかない。

《『日刊サイゾー』ラジオコラム第4回「おもしろくてあたりまえ」という壁を越える、若手コント師の傍若無人ぶり

 『ANNお笑いオールスターウィーク』》
 http://www.cyzo.com/2012/09/post_11367.html
《そのあとがき》
 http://arsenal4.blog65.fc2.com/blog-entry-197.html

 

 

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